鐘の音。
皆さんのご自宅の周りで、鐘の音は聞こえますか?
例えば、お寺の、教会の、学校の、鐘の音が聞こえること、ありますよね。
普段は意識していなくても、ふとした時に鐘の音の印象を強く感じたり。
なぜだか、鐘の音と深い意識が共鳴して、思索を巡らすきっかけになったりします。
白昼夢を見るように過去や未来、現在の自分に思いを馳せることだってあるでしょう。
ときには、鐘の音が思いもよらない気付きを与えてくれる———。
南イタリアのマテーラを訪れたとき、私は鐘の音に救われました。
そんなことを、ふと思い出しました。それもまた、近所のお寺の、鐘の音になんとなく足を止めたから。
なんだか少しポエム調になってしまいましたが^^;
マテーラに行く機会のある方は、鐘の音にも思いを馳せてみてくださいね!
「マテーラの洞窟住居群」とは?
南イタリアにある「マテーラの洞窟住居群」は世界遺産です。今でこそ、近代化していますが、1950年頃までは、劣悪な環境で人々が暮らしていたそうです。
トイレ、台所、ベッド、その他すべてが一つの部屋(洞窟)にありました。馬を持つ人は、その馬と同じ部屋に住んでいたようです。家族間のプライバシーや、衛生観念に乏しい生活でした。
国の恥とし、イタリア政府は、洞窟から人々を追い出してしまいました。マテーラの洞窟住居群は一時、無人になりました。
それから時を経て、歴史や社会的価値が見直され、「マテーラの洞窟住居と岩窟教会公園」として世界遺産に登録。
現在では、再び人が住み、ホテルもあります。もちろん、水回りは整備され、空調設備もあります。実際にわたしも洞窟ホテルに泊まりました。
マテーラ観光に役立つ地図
旅へ出る前に、ウェブサイトから地図をダウンロードしました。
(↑すごく役に立ちました。黒い花のようなマークの場所に立つと絶景スポットを見られます)
そして、地図を旅行雑誌の写真と見比べました。
町のどこに立てば、旅行雑誌と同じ場所にカメラを構えられるか、見当をつけました。
この場所から撮影したのだろうな。撮影時間は、おそらく早朝。日の出前に撮影場所へ向かおうと決めました。
きっと同じ場所、同じ光でマテーラの洞窟住居群を撮れるはずだ、と。
地図に赤いペンで印をつけました。
マテーラの絶景スポット
日本からローマ空港とバーリ空港を経由し、マテーラに到着。
マテーラに着いた翌日、早朝、まだ空が暗いうちに、ホテルを出発しました。あらかじめ調べておいた絶景スポットで写真を撮るためです。
地図を片手に赤印をつけた場所を目指しました。
そして、念願が叶い、計画した通りに景色を見て、カメラに収めました。
メモリーカードの容量がいっぱいになるほど、何枚も撮りました。角度を変えてみたり、背伸びしてみたり、近くをウロウロ歩いてみたり。
太陽が昇り、ずいぶん時間が経過したころに、もういいだろうと自分で自分に言い聞かせ、その場を離れることにしました。
そのあと、予定では一旦ホテルへ戻ることにしていました。
だから、朝食をとっていなかったし、化粧をしていなかったし、水を持っていなかった。無防備すぎる。。。
なのに、結局、ホテルには戻りませんでした。ホテルへ引き返す時間が惜しい気がしたのです。
マテーラの観光スポットを歩き回る
そのまま、マテーラに点在する博物館や教会を見て回りました。
「グロッタの家 Casa Grotta di Vico Solitario」
かつての洞窟住居の様子がわかる「グロッタの家 Casa Grotta di Vico Solitario」。サッソ・カヴェオーソ地区にあります。
- 住所:Vico Solitario, 11
- 開館日時:年中無休 9:30~日没まで
- 料金:3ユーロ
- 備考:日本語での音声ガイドあり
「サンタ・マリア・マドンナ・デ・イドリス教会 Chiesa di Santa Maria De Idris」
洞窟教会のひとつ「サンタ・マリア・マドンナ・デ・イドリス教会 Chiesa di Santa Maria De Idris」。サッソ・カヴェオーソ地区にあります。巨大な岩のなかに煉瓦が埋め込まれ、教会としては実に特異な外観です。
- 開館時間:10:00~16:00(一部の祝日は休館)
- 料金:共通券8ユーロ(3カ所)、7ユーロ(2カ所)、4ユーロ(1カ所)
「サン・ピエトロ・カヴェオーソ教会 San Pietro Caveoso」
切り立った崖の上に立つ「サン・ピエトロ・カヴェオーソ教会 San Pietro Caveoso」。サッソ・カヴェオーソ地区にあります。13世紀に建てられた教会を改築して、17世紀に現在のような姿になったようです。内部はミサの時間のみ拝観できるようです。
- 拝観時間:夏期 19 :00(日祝は11:00も)、冬季 18:30(日祝は9:00、11:00)
「マテーラ大聖堂 Cattedrale di Matera」
「マテーラ大聖堂 Cattedrale di Matera」は二つのサッシ地区(サッソ・バリサーノ地区とサッソ・カヴェオーソ地区)の中間に位置しています。13世紀に建てられたプーリア・ロマネスク建築の教会です。高台に位置しているので、教会前の広場からはマテーラの洞窟住居群を一望できます。
- 開館時間:9:00~17:30(日曜9:00~10:30、12:30~17:30)
- 料金:3.5ユーロ(付属博物館と共通)
マテーラは乾燥して暑い…熱中症にご注意を
散々歩き回り、ふと、自分の体調に不穏な兆候を感じました。立ちくらみというのか、温泉に長くつかり過ぎてくらくらっとするときと同じやつ。
あとで「熱中症」の症状を調べてみたところによると、このとき、実は、わたしは熱中症らしい症状に見舞われていたのです。頭が痛く、吐き気をもよおし、体がぐったりしていました。おそらく原因は、気温三十度を超える夏の日。日本では想像できないほど乾燥した南イタリアで、太陽光の下、水すら飲まず、早朝から歩きに歩いていたせいでしょう。
そのような症状になりながらも、歩き続けました。違う風景に出会えるかもしれない、という好奇心。はるばる日本からやってきたのだから、せっかくの機会を無駄にはできない、という貧乏性。
ですが、カーブのある長い石畳の、道の途中でとうとう前に進めなくなってしまいました。あまりに気分が悪くなったせい。わずかな日陰に身を寄せ、壁に背を持たれました。目を開けているのが辛く感じました。すべての音が消えていくようだったのを憶えています。すっと意識が遠くに行ってしまうようでした。
まずは目を閉じて。それから呼吸を整えました。
少し休めば、また元通り元気になるだろうなんて思いながら。まだまだ先まで歩いて行くつもりでした。
と———、そのとき、突然、教会の鐘が鳴り響きました。
大きな音が空から降ってきたようでした。カーン、カーン、カーン。
目を開けると、小鳥の集団が大きな音に驚いて羽ばたき去っていくのが見えました。
そのままぼんやりと周りの風景を眺めながら、鐘の音に耳を澄ませました。
カーン、カーン、カーン。
大きな鐘の音を聞いているうちに、なぜだか、気分がとても落ち着きました。
それから、あっ、そうか、体調が悪いのか、と気づいたのです。
自分の症状を顧み、もしかすると、熱中症かもしれないと感じました。
熱中症は無自覚のうちに訪れるもの、なんですね。
そういえば、長い間水を飲んでいませんでしたし、帽子やサングラスはホテルに置いたままでした。
まあ、いわば、自業自得の成り行きだったんです。
マテーラのホテルに戻る
その日は、観光を続けるのをやめました。なんとか歩いてホテルに戻りました。水を口にし(気分が悪く、たくさんは飲めなかった)、ベッドに横になりました。日光を浴びたせいで熱っぽくなった体に、シーツの冷たさが心地よかった。
それから、そのまま眠りにつきながら考えました。
もしも、教会の鐘が鳴らなかったら、熱中症で倒れてしまっていたかもしれないな、と。
鐘の音が、自分の体を案じるよう、気付きを与えてくれたように感じました。空高く響く鐘の音には不思議な効果があるものだなとつくづく思いました。
もしも、今後マテーラを旅する機会のある方は、水分補給や帽子、サングラスを忘れずに観光をなさってくださいね。
そして、マテーラに鳴り響く鐘の音に耳を傾けてみるのもお忘れなく☆