シエナの「市立美術館 museo civico」は、有名な「カンポ広場」や「マンジャの塔」とあわせて訪れたい観光スポット。
こちらの美術館では、シエナ派絵画を代表する画家、シモーネ・マルティーニが描いた壁画「荘厳の聖母(マエスタ Maesta)」をじっくり鑑賞できます。というわけで、まずは予備知識から。
シエナ派とは?
そもそもシエナ派とは何なのでしょうか?
シエナ派(イタリア語:Scuola senese、英語:Sienese School)は、ルネサンス期のイタリアにおいてシエナを中心に活動した画家群。 同時期のヴェネツィア派、フィレンツェ派と並ぶ。(出典:ウィキペディア)
ルネサンス期というと、ボッティチェリやミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどを思い浮かべますが、彼らはフィレンツェ派と呼ばれるグループに位置づけられているのですね。
代表的な画家「シモーネ・マルティーニ」
シエナ派の著名な画家のひとり「シモーネ・マルティーニ Simone Martini」(1285~1344)繊細な色彩と優美な線描を特徴としています。
各地でひっぱりだこだった
活動範囲は広く、イタリア国内ではアッシジ、ナポリ、ピサ、オルヴィエートにその足跡を残しています。また、フランス・アヴィニヨンの教皇庁にも招かれるなど、各地でひっぱりだこだったようです。
詩人ペトラルカに詩を贈られている
詩人のフランチェスコ・ペトラルカ(1304~74年)からは、二篇のソネットを捧げられています(カンツォニエーレ 第77、78歌)。きっかけは、ペトラルカ夫人の肖像画の依頼だったとか。
初期の傑作「荘厳の聖母」(マエスタ Maesta)
そんな、シモーネ・マルティーニの初期作品が「荘厳の聖母」。かつて「評議会の間」として使われていた部屋の壁画として描かれています。縦横7×9メートルほど。かなりの大きさです。
モチーフはキリスト教の聖母子と聖人たち。聖母子をとりまくように聖人を配列するという構図は、ゴシック様式絵画の一般的なやり方だったようです。この絵は、当時の政治家(9人の執政官)たちに、公共の善を優先させることを思い出させる意味もあったとか。
ちなみに、美術館は市庁舎の2階にあり、この壁画を見ることができるのは「世界地図の間 Sala del Mappamondo」です。
<参考文献>
・池上 俊一「シエナ―夢見るゴシック都市」 (中公新書)
・ミシェル・フイエ「イタリア美術」(白水社)