地球の歩き方には、エステンセ美術館(Galleria Estense)が「イタリアで最も美しい美術館」のひとつとして紹介されていました。
イタリアでよくあるタイプのちょっとした大げさな表現…というのは理解しつつ(笑)
ただ、私がこの美術館を実際に訪れて感じたのは、世界観が一貫していることが美しいんじゃないかなということです。
絵画や彫刻にとどまらず、工芸品や楽器にいたるまで──展示されているものはジャンルこそ多様ですが、どれもエステ家の美意識を通してまとめられているように感じました。
この記事では、私が訪れたときの鑑賞レポートをまとめます。これから訪れる方の参考になれば幸いです。
エステンセ美術館の簡単な情報だけ知りたいという方はこちらの記事の中ほどをご覧ください。
⇒モデナ観光まとめ|世界遺産の大聖堂と美食の街をめぐる旅
エステンセ美術館(Galleria Estense)とは?

エステンセ美術館は、モデナを治めたエステ家がおよそ4世紀以上にわたり収集してきたコレクションを中核として公開している美術館です。展示は16〜18世紀の絵画や彫刻が中心ですが、古代エジプト・ギリシア・エトルリア・ローマに連なる考古資料が含まれるなど、時代もジャンルも幅広く楽しめます。
さらに、象牙細工・メダル・マヨリカ(色絵陶器)・楽器・装飾芸術品といった美術工芸品も豊富で、エステ家が多様な芸術に関心を寄せていたことが伝わってきます。
エステンセ美術館のチケット購入方法|入口の場所と館内への行き方

入口を通り抜けると、まず中庭が見えてきます。

右手方向に進み、奥にあるチケットカウンター兼ブックショップでエステンセ美術館のチケットを購入できます。
美術館が入っている「Palazzo dei Musei」は、市立歴史博物館や図書館などが入った複合文化施設です。そのため建物内にはいくつかチケット売り場があり、初めて訪れると少しわかりにくい構造になっています。

チケット購入後は案内板に従って「Galleria Estense」と書かれた方向へ進み、階段を上ります(エレベーターもあります)。
エステンセ美術館は建物の4階(=イタリア式では「3階」)にあります。
エステンセ美術館の展示ルート|22室をめぐる回廊式の展示ルート

エステンセ美術館の展示は、22の部屋からなる回廊型の構成で、おおむね時代を追うように作品が並びます。
ただし、絵画・彫刻・陶器・楽器などジャンルごとに部屋が分かれているため、すべてが厳密に年代順というわけではありません。
それでも、なんとなく「ルネサンス → バロック → 近代」と時代の流れを辿りつつ美術品を鑑賞できるのではないでしょうか。
エステンセ美術館を歩く

扉を抜ければ、美術館です。係の人にチケットを見せて入ります。
そのまま、まっすぐ進むと「2」の部屋になります。その突き当りにあるのが、

バロック期のイタリア最大の彫刻家と称されるジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作『フランチェスコ1世・デステの胸像(Busto di Francesco I d'Este)』。
(さきほど、この美術館はおおむね時代の流れに沿って作品が展示してあると書きましたが、この作品に関しては例外です。)
ベルニーニといえば、ローマ・バチカンを彩る数々の彫刻作品で有名ですよね。ここモデナに、しかも胸像という割と小さなスケールでベルニーニの作品があったことが意外でした。
エステンセ美術館を代表するこのベルニーニの彫刻の前を過ぎて…
「3」の部屋から主な展示がはじまります。

最初は、初期ルネサンスのキリスト教絵画が並んでいました。わたしは、初期キリスト教絵画にすごく惹かれます。

素朴で繊細な雰囲気が好きなんですよね(^^)

ルネサンス絵画へと時代が移っていきます。

ティントレットの作品もありました。『オウィディウスの変身物語に基づく場面』(1541–1545年)。たくさんのパネルが並んでいますが、もともとは天井画だったようです。モデナのドゥカーレ宮殿の第二国家の間の天井を飾っていたこともあるのだとか。

エル・グレコ作『モデナの三連祭壇画(Modena Triptych)』(1567-1568年)。携帯用の祭壇画です。
ガラスケースの中に展示されていました。

美しい工芸品もありました。16世紀後半に制作された携帯用書き物机(Scrittoio da viaggio)です。古代の劇場を模したデザインでしょうか。大変精巧な造りで見入ってしまいました。
そして、バロックへ。

グエルチーノの絵画『ヴィーナスとキューピッド、マルス(Venere, Cupido e Marte)』(1633年)。
キューピッドの放つ矢がこちらに向かってきそうですよね(笑)

ディエゴ・ベラスケス作『フランチェスコ1世・デステの肖像(Retrato de Francisco I d'Este)』(1638年)は、「16」の部屋にありました。
余談ですが、エステ家のフランチェスコ1世は、ベルニーニに胸像を制作させ、ベラスケスに肖像画を描かせ、威厳を示そうとしたのでしょうね。フェッラーラを追われた後の再興への願いがうかがえます。

この美術館の特質な点は、絵画や彫刻、工芸品に加えて、楽器があることではないでしょうか。ドメニコ・ガッリ(Domenico Galli)制作のチェロ(1961)やバイオリン(1987)が展示されていました。たくさんの美しい装飾が彫られていましたが、どんな音がするのでしょうね。

最後に、目に留まったのは…17世紀ジェノヴァ派の画家ドメニコ・ピオラ(Domenico Piola)による寓意画で、『音楽の寓意(Allegoria della Musica)』。女性像は「Musica=音楽」を擬人化した姿と考えられそうです。女性とこどもとキューピッドの構図や表情がとてもかわいらしい印象でした。
まとめ|モデナのエステンセ美術館
エステンセ美術館では、初期ルネサンスの素朴な宗教画から、バロックの壮麗な絵画、そして楽器や美術工芸品まで──エステ家の美観のもとに収集された幅広い作品がされ展示されていました。
絵画や彫刻に興味がある人はもちろんですが、そうでない人も楽器や工芸品を眺めるだけでも楽しめる美術館だと思います。
モデナの観光スポットをまとめています。ご興味のある方はこちらもどうぞ。
⇒モデナ観光まとめ|世界遺産の大聖堂と美食の街をめぐる旅