シエナの大聖堂(ドゥオーモ Duomo)は町一番の観光スポット。12~14世紀にかけらて建てられたイタリアゴシック様式の教会です。700年も前に造られたとは思えないほど、壁や天井、床の装飾が豪華でおしゃれ。特に「白と黒」の大理石でデザインされた柱は、たいへん印象深いものです。 見ているだけで、美的センスが磨かれるような気分になりました。
そして、この「白と黒」のデザインは、シエナのシンボルマークにも用いられているんです。なんか興味深くないですか?というわけで、ちょっと調べてみましたよ☆
シエナの大聖堂の柱
聖堂内に美しく整列するいくつもの柱。白色と暗緑色の大理石(モンタニョーラ産、プラート産)が交互に積み重なり、1本の柱を形作っています。暗い聖堂内では緑暗色の大理石は黒色に映り、柱は白と黒の横縞模様のようです。こちらの大聖堂が出来上がる以前のロマネスク建築では、こうした縞模様がしばしば用いられていたのだとか。見た目の美しさというのもありますが、構造上の安定性にも寄与していたそうです。そして、シエナの大聖堂においては、もっとほかの意味合いも含まれています――。
シエナのシンボルマーク(紋章) Stemma di Siena /balzana
まずは下の図をご覧ください。
こちらは、シエナ市のシンボルマーク(紋章)です。イタリア版のwikipediaからコピペしてきました^^; 2色刷りで上に白色、下に黒色となっています。大聖堂と同じ「白と黒」でデザインされています。シンプルでおしゃれですよね。
ちょっと脱線しますが、参考までに東京都のシンボルマークと比べてみてください^^;(こちらも出典はwikipedia)イタリアのデザインはなんとおしゃれなんでしょうか。
上記のシエナ市のシンボルマークは、「ステマ・ディ・シエナ(Stemma di Siena)」と言われるもの。「バルツァーナ(シエナ市の旗balzana)」と呼ばれることもあります。大聖堂のほか、市庁舎や美術館、博物館など公立の施設のドアの淵や階段の手すりなどにさりげなく表示されているのを見かけました。市のウェブサイトでは、アイコン(ファビコン)としても使われています。また、大聖堂のチケットにも。
この色使い、日本人にとってはお葬式なんかを想像して縁起が悪いんじゃないの?と思ってしまいますよね。シエナではなぜこのような2色を大聖堂やシンボルマークに用いているのでしょうか?
大聖堂の柱やシンボルマークに使われる色「白と黒」の由来
シエナを象徴する色が「白と黒」になった由来には、いくつか説があるようです。
以下で紹介しますね。
- 伝説でシエナを建国したとされる双子、セニオとアスキオ。彼らが乗って来たのが白馬と黒馬だった
- セニオとアスキオがシエナ建国を祝って火を燃やしたところ、白と黒の濃い煙がたった
- 庶民と貴族、皇帝派と教皇派、善と悪など二項対立を意味するものとして、この2色を選ぶようになった
- もともと象徴的な意味があったわけではなく、大聖堂や貴族の邸宅などを飾る大理石の色として選ばれるうちに、シエナを象徴するものとなった
いずれにしても、こんなにシンプルで意味深な2色を大聖堂の柱に使ったりシンボルに据えたりするシエナの人の美的センスをうらやましく思います。
説教壇の円柱
ちなみに、大聖堂には縞模様でない柱もありました。
入口をぬけて左手奥にたたずむ、メリーゴーランドのような説教壇(il Pulpito)。説教壇とは、ミサで神父が信徒に話をするときに使う台のことです。9本の円柱に支えられているのですが、こちらの円柱は縞模様ではなく1色の色使いです。柱そのものの色彩に派手さはないものの、彫刻による豪華な装飾が施されています。9本の柱のうち4本は、ライオンの彫像の背中にのっているんです^^; 説教壇を制作したのは、ジョバンニ・ピサーノとその息子二コラ・ピサーノ。「現代彫刻の開祖」と称されたりする父子みたいです。
最後に
「白と黒」のデザイン、個人的にはとてもカッコいいと思いました。もちろん数々の装飾の一部にすぎませんが。大聖堂を訪れて、あらためてシエナという町が過去も現在もたくさんの人々を魅了し続けている理由がわかったような気がします。